NEWS

月桂冠株式会社との研究成果発表のお知らせ 音楽醸造の可能性検証 音楽による振動で香りの高い日本酒を醸造 特定の音波が発酵成分の増減に影響することを明らかに
2023-10-03
当社は、月桂冠株式会社(所在地:京都市伏見区、代表取締役社長:大倉 治彦、以下「月桂冠社」といいま す。)総合研究所と、共同研究により日本酒を「音楽醸造」する可能性についての検証を実施、音響による加振条件下において発酵経過の解析などを行い、特定の音波が発酵成分の増減に影響することを明らかにしました。
今回の研究成果は、「加振条件下における清酒醸造の発酵経過の解析」と題して、「令和5年度日本醸造学会大会」で2023年10月4日に発表します。
■背景
音楽を聴かせて醸造させた日本酒やワインなどの醸造酒が多数商品化されていますが、詳細な研究はまだ少数しか存在しません。ワイン醸造では音波の振動により酵母が活性化して発酵が早く進むことや1)、日本酒醸造でも超音波によって発酵が効率よく進むことも報告されています2)。また、後述する音波を振動に変える装置(以下、加振器)を用いた日本酒醸造でも発酵が進むことが知られているものの、特定の香味成分が増加したという報告はありませんでした。そこで本研究では、日本酒における特定の好ましい成分の増減をコントロールできる 「音楽醸造」の可能性に着目し、特定の音波を発酵タンクにあてた時の日本酒の成分への影響を調べました。
■4種類個別の音波を聴かせて日本酒を醸造し、香気成分を分析
特定の音波をスピーカーから醸造タンクにあてても振動が伝わりにくいために、オンキヨー社が開発した加振器(音波を振動に変換できる装置)をステンレスタンクに装着し、日本酒を醸造しました。この加振器を取り付けたタンクはスピーカーと同じように音を出すことから、「スピーカーそのもので日本酒を醸造した」というイメージとなります(下図参照)。

ヒトの可聴域(20~20,000 Hz)から適切な4つの音波を選択し、音波をあてながら醸造した日本酒の香気成分測定を行いました。吟醸酒の主要な香気を構成する、バナナのような香りの「酢酸イソアミル」と、リンゴのような香りの「カプロン酸エチル」の生成濃度への影響を下図に示します。

音波を当てることで、各音波で多少の増減はあるものの、特定の音波によっては、音波を当てていない状態に比べて、香りの成分値が1.2倍近くに増加することが明らかになりました。そのほか追加の実験により、糖や有機酸の量についても加振条件下の醸造により若干の変化が観察され、特定の音波が発酵成分の増減に影響することが明らかになりました。